第3回 「骨粗鬆症と漢方」その他  フローラ生活習慣病予防教室より

「生活習慣予防に役立つ薬膳の考え方」・「骨粗鬆症の予防に良い薬膳」・「骨粗鬆症の予防とツボ療法」・「骨粗鬆症の予防に良い運動法」など。

「骨粗鬆症と漢方」 国家公務員共済組合連合会水府病院 
                        整形外科・漢方診療科部長  医学博士 五十嵐康美

骨粗鬆症とは、 
  骨がもろくなって骨折の危険が増した全身性の疾患と定義されています。(骨粗鬆症とは(1)参照)閉経後は、女性ホルモンが減少することで急激に骨量が減るため、骨粗鬆症は、女性に起こりやすいのが特徴です。起こりやすい骨折は、足のつけね、背骨、腕のつけね、手首で、特に足のつけねの「大腿骨頚部骨折」は寝たきりの主要な原因となり、ほとんどの場合、手術が必要になります。 日本骨粗鬆症学会の試算によると、大腿骨頚部の骨折による入院・手術代は、一人あたり約132万円。このうち12%が寝たきりになるとして、4年間の総医療費・介護費用は約1719万円。 大腿骨骨折は、年間約10万人いるといわれていますので、骨粗鬆症は、日本における高齢化社会の大きな問題になっています。骨粗鬆症を予防するには、まず食を基本とした生活習慣の改善が大切で、皆が元気で暮らせるような東洋医学の知恵を紹介します。
◆骨粗鬆症の薬物治療◆  
  骨粗鬆症に対しては、骨粗鬆症に用いられる薬に示すように、いろいろな薬があります。カルシウムとビタミンDとビタミンK、骨の代謝を調節するものでは女性ホルモンやビスフォスフォネート剤がよく使われます。女性ホルモンは発ガン性の問題があり、今後の骨粗鬆症の治療は、骨折の頻度を減らすといわれるビスフォスフォネート剤が中心になると思われます。ただし、いったん減った老人の骨量は、薬で治療しても維持するのが精一杯です。

◆骨の質を高める漢方◆
 骨粗鬆症の治療の目的は、日本骨粗鬆症学会のガイドラインでも「骨折しないこと」とされています。最近では、骨の強度は、骨量のみでなく、骨の質などにもよることがわかってきました。(骨粗鬆症とは)(2)参照)東洋医学では、2000年も前に「金き要略」という漢方の古典に、「上工(上手な医者)は、未病を治す」とあり、まさに東洋医学の考え方は、まだなっていない病気を治す、(骨折の)予防という意味で、骨粗鬆症には漢方治療が向くといえます。漢方は、骨量を増やすと同時に骨折しにくいように骨の質を向上させる可能性があるので、総合的な基礎治療として現代薬との相乗効果を期待でさます。

 漢方では、人間のライフサイクルについて、「黄帝内経」の中に「男は八の倍数、女は七の倍数の歳に節目がある」と書いてあり、節目の歳には「腎」の働きによって、変化がおこるといっています。東洋医学でいう「腎」は、成長・発育・老化や生殖などさまざまな場面をコントロールし、エネルギーをためておく生命活動の基本で、骨、骨髄、腰と密接に関係しています。老化とともに、骨がもろくなり、足腰が弱ってくる骨粗鬆症の症状は、「腎」の衰えと深い関係があるので、「腎」補う治療(補腎)が中心になるわけです。「腎」を補うものには、食べ物ではヤマイモ、ゴマ、黒豆、クルミなど。漢方薬では、六味地黄丸を基本に、身体の状態に応じて、例えば手足の冷えがある場合には八味地黄丸、尿の出を良くしたい場合には牛車腎気丸など様々なバリエーションの薬があります。既に痛みがあるときには、独活寄生湯や大防風湯を使います。これは、「腎」を補うとともに気や血も補って痛みを和らげる薬です。しかし、骨粗鬆症の漢方治療には、腎だけでなく「脾」も丈夫にすることが大事です。東洋医学の「脾」は消化吸収の働きを担っており、食物から骨をつくる材料を吸収して骨まで運んで骨をつくるために必要だからです。「脾」を元気にする(健脾)生薬にはヤマイモ、サンザシ、インゲンマメなどがあります。漢方では四君子湯、六君子湯、補中益気湯、帰脾湯などが使われています。

  こうした漢方薬の中で、八味地黄丸、牛車腎気丸、補中益気湯は、動物実験で骨量を増やすことが証明されています。ただし、一人ひとり体質や症状はちがうので、漢方薬を飲むとさには、必ず専門家によく相談して、自分にとって合う漢方薬を選んでもらうようにしましょう。

  最近の研究で、大豆イソフラボンが骨粗鬆症に大変良いことが、明らかになってきました。中でも納豆はビタミンKも含まれ、特にお薦めしたい食品です。東洋医学における骨粗鬆症の治療の要点は、「腎」を補い、「脾」を健やかに保つことにあります。食事をベースにして、漢方薬を基礎治療に用います。老人になられて骨量が少なくなったものを大幅に増やすことはでさません。だからこそ、骨量を大きく増やせる若いうちから世代を通じて骨の質を高めていくことが大事です。これは、家族皆で考えていただきたいことです。
監修:フローラ薬局 薬局長 篠原久仁子
「生活習慣予防に役立つ薬膳の考え方」 
               フローラ薬局国際中医師、針灸師、薬剤師 篠原泰友  フローラ薬局河和田店薬剤師薬局長    篠原久仁子

「薬膳」とは、中国伝統医学(中医学)の理論を基に、疾患の予防と治療、病後の回復、健康増進、老化の防止、強壮の目的で、生薬や食べ物を用いて作られる料理のことです。

 「薬(医)食同源」という言葉は、薬と食べ物は同じ健康を守る源であるという意味。そもそも薬(漢方薬)というものは、植物や動物、鉱物であれ、皆自然にあるものです。その中には、生妻(しょうが)や肉桂(シナモン)など私たちが、普段摂取しているものもあります。
薬膳は決して、中国の宮廷料理や薬膳のレストランでしか食べられない高級漢方を使った料理ではないのです。中国医学の理論を基に食べ物の働きを良く理解し、家族の体質や季節に合わせて調理すれば、普段の家庭料理でも、立派な薬膳料理になります。

◆薬膳における食性(食べ物の性質)◆
 古代中国では、食物のとらえ方は、たんばく質、脂質、炭水化物といった栄養素やビタミン、ミネラルなどの概念はありませんでしたが、四気、五味、帰経という陰陽五行説にもとづいた分類がありました。(五行表参照)五行説は、事物を木火土金水の五行に分けて考える中国の自然観、宇宙観であるとされています。五行説は、その人の体質をつかみ、治療に必要な漢方薬を選ぶときの大事な考え方でもあります。

五行説にもとづいて、食性を考えてみましょう。食性の一つである「四気」という考え方は、食べ物の性質を寒、熱、温、涼の四つに分類したものです。食べると身体を冷やすものが、寒性で、温めるものが熱性、その程度の軽いものが温、涼で、寒熱に左右されない中間の食べ物をへいせい平性といいます。「五味」という考え方は、食べ物の味を酸、苦、甘、辛、鹹(しおからい)の5つの味に区分けしたものです。帰経は、食べ物が五臓(肝、心、脾、肺、腎)のどの部分に作用するかをあらわしています。例えば、ヤマイモは、生薬名では山薬といい、八味地黄丸といった重要な補腎の漢方薬にも用いられていますが、性味は、甘・平性で、帰経は、腎・脾・肺です。健胃作用があり、腎や肺を強化するので、骨を丈夫にし、風邪の予防にも役立つ食べ物というわけです。

  五行の表でみていくと、腎は、骨と関係していることがわかります。古代の人は、このことを「腎は骨を主る」といい、腎の衰えは(腎虚)は、骨に影響することが知られていました。腎は、色でいうと黒と関係し、黒ゴマや黒豆、黒きくらげなど黒い食べ物は、腎を強化し、骨を丈夫にする食べ物です。こうした理論にもとづいて調理することが、骨の質を高め、骨粗鬆症の予防に良い薬膳となります。

「骨粗鬆症の予防に良い薬膳」 フローラ薬局管理栄養士・調理師 橋本直美

◆カルシウムとビタミンDを意識して摂取を◆

          
骨粗鬆症は長年の食生活の偏りが大きな原因となっていますから、毎日の食事をバランス良く摂ることがすべての病気を予防する基本です。しかし、栄養に注意している人でもカルシウムの摂取が不足してしまうのが現状です。そこで、いろいろな食品をしっかりと食べることを基本として、そのうえでカルシウムとビタミンDを意識して摂取することが望まれます。毎日の食卓にさらに200ミリグラムのカルシウム、目安として牛乳1本分、豆腐なら半丁を加えるようにしましょう。薬膳の考え方では、骨粗鬆症の予防には、「腎」や「脾」を強化する食物(山芋・ゴマ・豆類・エビ・イカなど)が良いとされています。とろろ汁や冷奴、ゴマ和えなどがおすすめです。

  その中でも郷土(水戸)の名産、納豆は骨粗鬆症に有効な大豆イソフラボン、ビタミンK、カルシウムが豊富で、骨を丈夫にします。さらに気血をめぐらせる「三つ葉」と、腎の気を補う「エビ」を入れたかきあげでおいしくカルシウムを補給しましょう。カロリーが気になる方は、納豆とDHA豊富なまぐろの山かけ丼なども、手軽な和食の家庭薬膳になります。
 
納豆とエビのかきあげ作り方(4人分)
@三つ葉一把は茎と葉を小口切りにする。
A適量の小麦粉と片栗粉と水で衣を作り
    @と納豆3パックとエビ50gを混ぜる。
B掲げ油を熱して、Aをスプーンで落とし入れて揚げる。
Cレモンの絞り汁をかけていただく。
監修:フローラ薬局 薬局長 篠原久仁子

 

「骨粗鬆症の予防とツボ療法」 フローラ薬局針灸師・薬剤師 入野真規子

 

◆骨粗鬆症には腎のツボと胃のツボを強化しよう◆
 東洋医学、特に中国医学では、漢方薬治療と針灸治療は密接に関係しています。針灸治療でも使うツボ(経穴)を利用して、家庭でも簡単にできるのが「ツボ療法」です。「健康増進」「生活習慣病の予防」などの養生法としてぜひ取り入れていただきたいものです。

  ツボは全身に分布しており、ツボとツボを結ぶ線が経絡です。経絡は体表だけでなく内臓にも分布するので、体表のツボを刺激することで衰えた内臓(五臓)に働きかけ、体質を強化することもできるのです。
 
中国医学には、「腎は骨を主り、髄を生ず」という言葉があるように、骨の成長、発育、骨髄の質には、腎が深くかかわっています。骨粗鬆症には、腎と脾を強化する目的で、腎のツボである「太谿」脾のツボである「三陰交」、胃のツボである「足三里」髄(骨を成長させる)のツボである「絶骨」(懸鐘)に棒灸することをおすすめします(棒灸による自己治療を参照)。
 棒灸はもぐさを棒状に固めたもので、片一方の端に火をつけて、皮膚から3〜5cm離した状態であたためます。

●太谿:足の内くるぶしとアキレス腱の間。
●三陰交:足の内くるぶしの一番高いところから3寸(指4本)上
●足三里:手の指4本を揃えて、膝の皿を抱えるように
             外側からあてる時、中指があたる所。
●絶骨:足の外くるぶしの−番高いところから3寸(指4本)上
監修:フローラ薬局 薬局長 篠原久仁子

 

「骨粗鬆症の予防に良い運動法」 フローラ薬局健康運動指導士 佐藤日佐子

 

腰付近の、背中の筋肉の内側にあります
背骨と、太ももの骨である大腿骨をつないでいます

大腰筋の3つの機能
@背骨をひっぱる:姿勢を自然なS字型に保ちます
A骨盤を支える:腸骨筋と連動して少し前傾した位置で支えます
B太ももを上げる:股関節を屈曲させて、太もも引き上げます

◆継続してウォーキング、筋肉トレーニングを◆

 骨は重力の刺激が加わった時こそ健康に保たれます。運動による強い刺激が加わると骨は強くなり、運動しないと使わない筋肉が衰えるように、骨もやせ細ってしまいます。いつまでも自立して生きていくために、ぜひ生活の中に運動を取り入れましょう。骨を強化する運動としては、縦方向の動きになるものが効果的です。気軽に行えるウォーキングはお勧めです。ただ歩くだけではなく次の5つのポイントを心掛け、さらに質を高めてみましょう。 @良い姿勢(おへそを引っこめる感じで)A少し歩幅を大きく(膝が伸び、踵着地)B肩の力を抜く(呼吸を楽に、腕の振りを大きく)Cさっさと歩くD楽しい気分で。 次に筋肉を介して骨を効果的に刺激することができる筋力トレーニングをお勧めします。簡単かつ短期間で腰痛、下腹ぽっこり体形、便秘、冷え性も解消し、姿勢も良くなる大腰筋トレーニングを紹介します。これらの運動を継続して行うことが最大のポイントです。

 

大腰筋トレーニング
●骨盤の歪みを整える仰向け足踏み 左右合計20回

骨盤の左右を交互に上げ下げすることで、骨盤の歪みを正します。

@仰向けになり、膝を真っ直ぐに伸ばしたまま右足を下に伸ばして左足は腰のほうに引き上げる。
A今度は反対に左足を下に伸ばして、右足を引き上げる。

●骨盤の位置を引き上げる その場足踏み 左右合計50回

太ももの筋肉を強化して、骨盤の位置を正しく前に引き上げます。

@背筋を真っ直ぐ伸ばして立ち、大きく手を振りながら、右の太ももを足のつけ根から水平に持ち上げる(骨盤ごと引き上げる感じで)
A右足を静かに下ろし背筋を伸ばしながら、左足を持ち上げる。
●大腰筋を強化するレッグレイズ(脚上げ)10回
Bお腹、お尻、脚の筋肉を使い、ひざを伸ばす。足首は90度に曲げ、お腹まわりとお尻、
太ももと膝の裏側に力を入れて、約5秒間キープする。

@仰向けになり、膝を立てる
この時、背骨が伸びているか確認する.

 

Cゆっくりと脚を下ろし@に戻す。息を吸いながら、ゆっくりとAの状態へ、そこから最初の状態に戻す。
A太ももを引き上げて、両膝を胸に近づける。
太ももと膝に力を入れ、両脚をそろえて、ゆっくりと息をはき、お腹に力を込めながら、脚を持ち上げていく。
監修:フローラ薬局 薬局長 篠原久仁子

「フローラ習慣病予防教室の様子」
 
 
演題「骨粗鬆症予防と漢方」について



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